狼上司と秘密の関係
千明がちゃんと謝罪しないといけなかったのに、あれをきっかけにして保育士時代のことを思い出して倒れてしまうなんて。
本当に自分がなさけなくなる。
「そんなこと気にしなくていい。救急車を呼ぼうか悩んだんだぞ」

「それは大げさだよ」
自分のときだって救急車を拒否したのにと、千明は苦笑する。

「だけど検査くらいはしたほうがいいかもしれない。今度の休みは病院へ行くべきだ」
「わかった。ちゃんと診てもらってくる」

きっと、嫌なことを思い出したことによるストレス反応だと思うけれど、千明は素直に頷いた。
そう言わないと大和が納得してくれそうになかったからだ。

「それにしてもあんなミスするなんて珍しいな」
「ご、ごめんなさい」

今思い出しても恥ずかしい。
塩と砂糖を間違えるなんて、ここに務め始めてから初めてのことだった。
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