狼上司と秘密の関係
大和にそう提案されてふたりはリビングのソファへと移動した。
飲みかけの赤ワインと新たに冷蔵庫から出してきたチーズと一緒にホラー映画を鑑賞する。

梨江も大和も、どうしてこうホラー映画好きなんだろう。
それとも自分があまり観てこなかっただけなんだろうか。

そう思いながらゾンビに追いかけられている女性を見つめる。
こんなんじゃなかなかいい雰囲気にならない。

それじゃここに来た意味がないのに……そう思って自分がどこか焦っていることに気がついた。
食事が終わって即ベッドなんてことを期待していたわけじゃないのに、恥ずかしい。

ホラー映画が架橋を迎えたころ、大和の手が千明の手をそっと握りしめた。
「一緒にお風呂に入ろうか」

突然の提案に千明はテレビに視線を向けたまま硬直してしまった。
「嫌なら、いい」
手を引っ込められて慌てて「嫌じゃないよ」と、返事をする。
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