狼上司と秘密の関係
☆☆☆

この日は雨模様で、体験教室も予約が少なかった。
公園に遊びに来ている人もかなり少なそうだ。
「雨やまないかなぁ」

施設の窓の外では大粒の雨が地面に叩きつけていて、室内に流れているラジオが聞こえないくらいだ。
この分じゃ今日1日お客さんの足はにぶそうだ。

窓から離れて掛け時計を確認すると、いつの間にかお昼になっている。
昼休憩のときにはチャイムが鳴るのだけれど、それも聞こえないくらいの雨だ。

千明は1度更衣室へ戻り、ロッカーに入れてあるお弁当箱を取り出した。
今日のお弁当は大和にも同じものを作った。

それだけでなんだかくすぐったい気持ちになる。
いずれはこれが日常になるのかなぁ、なんて。
「梨江、一緒にご飯――」

先にお弁当の準備を済ませていた梨江にそう声をかけたけれど、すぐ近くに晋也がいることに気がついて途中でやめた。
ふたりは施設内のベンチに座って食べるみたいだ。
その中に入っていくのは野暮というものだろう。

だけど外は雨が降っているから外に出ることもできない。
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