狼上司と秘密の関係
だけど梨江は左右に首を振った。
「付き合ってたと言えばそうなんだけど、ちゃんと口に出してはいなかったんだよね」
そう言われて、あぁ、そういうことかと納得する。

大人同士の恋愛になると時として順序が逆になるときもある。
だからハッキリとした告白はまだだったんだろう。

「それで、晋也はなんて?」
梨江の顔を見ていればわかっているようなものだけれど、一応質問した。

梨江が聞いてほしそうにしていたからだ。
「OKだって」
そう言って梨江はロッカーから大きなお弁当箱を取り出した。

それはどう見ても男性向けの大きさだ。
「もしかして作ってきたの?」
梨江はコクコクと頷く。

さっそく自分と同じことをしているのを見て微笑ましく感じられる。
「だから、明日からは自分の分も作ってくるつもり」
「そうなんだ。なんか嬉しいね、今日はお祝いしなきゃ」
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