狼上司と秘密の関係
「そう。同い年くらいの男の子だったからすぐに意気投合して一緒に遊ぶようになった。だけど、夜になって花火をしようってことになったとき、どっちがどの花火をしたかで、言い合いになったんだ」

子供のことだから、相手よりも自分の方がいい花火を持ちたい。
沢山遊びたいと思うのは当然のことだった。

だけどその喧嘩は徐々にヒートアップしてきて、気がつけば大和は牙を向いていた。
「熱くなると頭の中が真っ白になって、なにもわからなくなった。子供だったから、自分の力を制御できなかったんだ」

「それで、どうなったの?」
ゴクリと唾を飲み込んで先を促す。

子供時代の大和が狼の姿になったところを想像して、緊張感が走った。

「あのときは丁度互いの両親が近くにいなくて、一緒にいてくれたのはここの職員さんだった。喧嘩を始めた俺たちを見て止めに入ってくれたのも、その男性職員さんだった。でも、勢いがついて自分を止められなくなってた俺は、その手に噛み付いたんだ」

その瞬間、大和は顔をしかめた。
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