狼上司と秘密の関係
大きな手の優しいぬくもり。
「私、保育士の先生になりたかった。優しいあの人みたいになりたかった」

そう呟くと、知らない間に涙がこぼれた。
ポロリとこぼれた涙は頬を伝って床に落ちる。
「だけど現実は違ったの。先生でありたいのに、考えることが沢山ありすぎて、先生でいるだけじゃ認めてもらえなくて……」

気がつけば話をしながらボロボロと涙が溢れ出していた。
自分でも気が付かなかった自分の気持ちが止まらなくなって、両手で顔を覆って泣きじゃくる。

「それでも頑張って先生になろうとしたけど、ダメだった。できなかったの」
大和は黙って千明の頭を撫でた。

千明が吐き出す気持ちを全部受け入れるように、優しく、丁寧な仕草で抱き寄せる。
「だけどそれは何年も前のことだ。今の千明は成長した」
「そんなこと……ない」

成長なんてきっとしてない。
この前だってミスをしてクレームを入れられると思って、気分が悪くなって倒れてしまった。

どこにいても失敗ばかりだ。
「成長してるさ。なにがあっても絶対に仕事を休まない。子供を見れば笑顔になる。それって強くないとできないことだろ」
「でも、でも……」
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