狼上司と秘密の関係
大和と付き合っていなければ、今こうしてもう1度夢を追いかけるようなこともなかったはずだ。
本当に、心から感謝している。

「ところで千明先生、今日は誕生日じゃなかった?」
「実はそうなんです」
千明は今日で28歳になる。

残念ながら大和は今日も仕事で、予定はなにもなかった。
がっくりと項垂れてしまいそうなときに園児たちが一斉に駆け寄ってきた。

そして声を合わせて「千明せんせい、おたんじょうびおめでとう!」と、拍手してくれる。
それだけで千明の胸は一杯になって泣いてしまいそうになる。

「これ、みんなでお花を積んできたの!」
アユちゃんが手渡してくれたのは黄色い、小さな花だった。
小さな手に一杯握りしめられている。

「これ、先生に?」
「そうだよ!」
コックリ頷くアユちゃんから花を受け取って匂いをかいでみると、甘い香りがした。
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