狼上司と秘密の関係
☆☆☆

翌日はかけっぱなしのアラーム音で目を覚ましたが火曜日だ。
普通の会社は出勤日だけれど、千明の勤めているのは観光地だから火曜日が休みになっている。

布団から右手だけを伸ばしてスマホを引きずり込み、アラームを止める。
眠い思考回路は徐々に覚醒していき、そして昨日の出来事を思い出した瞬間千明は飛び起きていた。

「私……」
そのまで言って言葉を切り、真っ赤になった頬を両手で包み込む。

千明だってもう27歳だ。
恋愛経験のひとつやふたつはある。

だけど大学に入学してからは勉強や就職活動、それに保育士の夢を叶えた後の忙しさに忙殺されてすっかりそういうこととは縁が切れていたのだ。

再就職した先でも、まさかこんな展開が待ち受けているなんて思っていなかった。
だって今まで大和のことを可愛い人だと思ったことはあっても、そんな感情になったことはなかった。
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