狼上司と秘密の関係
☆☆☆

アパートに戻ってスマホを確認すると梨江たちからメッセージが届いていた。
《梨江:菊池さんとどうだった!?》

好奇心むき出しのメッセージについ苦笑いを浮かべてしまう。
けれどその笑みもすぐに引っ込んだ。

大和の対応は本当にあのときのことを忘れさせるようなものだった。
ふたりきりでいたのにその話題に触れなかったということは、本当に忘れてしまいたいものなんだろう。

《千明:別に……なにもなかった》
文章の後に泣き顔のマークを入れたかったが、本当に落ち込んでいたからそれもできないまま、スマホをベッドの上に投げ出した。

自分の体は床に投げ出して両手で顔を覆う。
こんな気持になるなら、大人っぽく割り切った返事なんてしなければよかった。

そんな後悔が押し寄せてきて、大きなため息を吐き出したのだった。
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