狼上司と秘密の関係
「今回は何事もなく済んだけど、それでも気をつけないとな」
安堵する暇もなく大和はそう言った。
アイスクリームの材料の賞味期限を全員で周知すること。

賞味期限が近くなったものは使わないこと。
それに使ったもは2度洗いすることになった。
少し手間はかかるけれど、それで今回のようなクレームがなくなるのであれば安いものだった。

特にアイスを作るための玉は洗いにくいこともあり、普段から気をつける必要がありそうだ。
「お騒がせしてすみませんでした」
自分たちの勘違いだとわかった母親が、子供つれて謝罪にきた。

その手には有名な焼き菓子が持参されていて、晋也は無駄な仕事を増やされた鬱憤を晴らすように食べていた。
「あ~あ、今日は疲れたね。早く帰ろう」

営業時間を終えてようやく体験施設の鍵を閉めた頃、大きく伸びをしながら梨江が言った。
「そうだね。早く帰ろう」
そう返事をしてから今日は自分の車で来ていないことを思い出した。

少し逡巡してから「ねぇ、今日は送って行ってくれない?」と、梨江に持ちかける。
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