狼上司と秘密の関係
☆☆☆

遊園地までの道はスムーズに流れていた。
自分たちは休日だけれど、世間的には平日でみんな仕事へ行っているからだ。
「こういうときに平日の休みでラッキーだったなって思うよな」

運転しながら大和が呟く。
「そうですね。だけど遊園地とかだと休日しかやっていないイベントがあるんじゃないですか?」

「それもそうか。そういうのが見たいときには休日休みがいいけど、でも人手が多くてあまり見れなさそうだよなぁ」
休日休みと平日休みのどちらがいいかという話を続けているうちにあっという間に遊園地の駐車場に到着していた。

もう11時近くになっているけれど、駐車場は半分ほどしか埋まっていない。
ふたりして入園すると遊園地の有名キャラクターたちが駆け寄ってきてくれた。

「わぁ、可愛い!」
クマのウサギの2体の着ぐるみがふたりの周りをぴょんぴょん跳ねて歓迎してくれる。
ウサギの手にはピンク色の風船が持たれていて、千明に差し出してきた。

「私にくれるの? ありがとう」
笑顔で風船を受け取ると、着ぐるみたちは手を振りながらどこかへ行ってしまった。

「風船くれたぞ。こういうのって子供にしかしないのかと思ってた」
「普段はそうなのかもしれないですね。でも今日はお客さんが少ないから特別なのかも」

千明は空の上でゆらゆら揺れている風船を見つめてそう答えたのだった。
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