君の隣は誰にも譲れない
素性
「稚奈さん。何だったんです?」
仕事場である研究所に戻ると、同僚である沢田君に尋ねられた。
「うん……ちょっと。はあ……」
フラスコを机においた彼は私を見て言った。
「ろくな話じゃなかったんですね。稚奈さん、もっと強く出てもいいのに……」
「え?」
「社長は稚奈さんに株を遺言で半分近く譲渡したんですよね。だったら、何も副社長達の言いなりになる必要なんてないですよ」
驚いた。沢田君は話を聞いていたんだろうか?
「聞いてたの?」