君の隣は誰にも譲れない

 沢田君はため息をついた。

「やっぱりね。そうじゃないかと思いました。何かうちの会社のことでしょ?最悪売却とか合併とか……」

 びっくりする。かまかけられたのか。それにしても鋭い。さすが、お父さんが次の室長候補と言っていただけのことはある。

「あの人達は、よくわかってませんからね。今どういう研究をしていて、先々何を考えて我々がやっているか……お金の問題もそれに関係してますけど」

「確かにそうよね……」

「それで、どうするんです?何があったかよくわかんないですけど。僕に相談して下さいよ。力になります」

「うん、ありがとう。でも、まだ自分で出来ることがあるかもしれないから考えてみる」

「そうですか?一人で抱え込まないで下さい。稚奈さんの悪い癖ですよ。社長も言ってました」

「……そうだね」

 私は父と母が離婚した頃、まだ小学生だった。母がいなくなって、何かあっても忙しい父には言えなくなり、誰にも頼らず自分で解決する癖がついた。
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