君の隣は誰にも譲れない
相互さんの父親である高藤化学の社長が言った。
「君にはうちのお抱え弁護士と争うほどの弁護士がいるかな?」
「そんな……」
「稚奈さん。君は僕と結婚したら、僕の秘書になってもらおう。朝から晩まで一緒だよ。化学に詳しいしね、ピッタリだと思わない、父さん?」
「ああ、そうだな。茂、彼女が好きでしょうがないんだな」
「こんな美人で才媛だ。願ってもないよ」
気味が悪い。鳥肌が立つ。馬鹿馬鹿しい。父の言うとおり、会社は捨てて自分の身を守る方がいいかもしれない。
そう思って、反撃しようと思ったときだった。
ノックの音がして、ドアが開いた。