君の隣は誰にも譲れない
「残念だな、京介君。これはね、総帥も黙認してくれているんだ。茂の彼女とのお見合いはこいつのたっての願いでね。総帥にお願いしたのさ」
「そうですか。茂は私がここに出入りしているのを察知して、弱みを握るため隠れて見に来たんでしょ?その時、稚奈さんを見て偶然気に入ったのは本当かもしれないが、まあさっき言ったとおり、僕への当てつけや他の考えもあっただろうね」
どういう意味?
「ふざけるな、京介。邪魔だ、帰れ!」
私の叔父と叔母は目の前の光景をあっけにとられている。叔父は小さな声で京介さんに聞いた。
「あ、あの、どちら様ですか?」
京介さんはにっこりと叔父に向かって微笑むと、答えた。
「これは失礼。私とすれ違ったことはあったような気がしますけど、ご存じなかったんですね。私は亡き先生の教え子で、高藤財閥の高藤京介というものです。そこの茂のいとこですよ」