君の隣は誰にも譲れない

 駐車場の車に近寄り、ロックを外す。彼は、車を見てびっくりしている。

「隣、乗って下さい」

「これ、君の車?」

「ええ。可愛いでしょ」

「可愛い?まあ、色は赤いけど結構大きな車に乗ってるんだね」

「ファミリーカーなんですけど、工場の商品を運んだりすることに使ったりもするので……ほぼほぼ社用車扱いです。だから、色だけ可愛くしたりして……乗って下さい」

 彼は私をまず運転席へエスコートして扉を開けると座らせた。自分は向かいへ回って扉を開けた。するとそこに座っている小さな犬のぬいぐるみを見て固まった。

「あ、ごめんなさい。すぐにどかします」

「この小さな犬のぬいぐるみ……前からあるの?」

 隣の席に乗っている私の大好きな犬のぬいぐるみ。私は急いで後部座席へおいた。このぬいぐるみは小さい頃から持っている。誰かにもらったみたいだけど、覚えていない。でも小学生まで一緒に寝ていた。今はドライブの守り神。

「ああ、古いけど、小さいときからの私のお友達です」

「そうか、大切にされていたんだな」
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