君の隣は誰にも譲れない
「そんな、サインしてしまって今更……」
弁護士が言った。
「あとのことはお任せを。どちらにしろ、あちらの買収がうまくいかなければそこまでですが、契約破棄を希望するならば、株を京介氏に預ける方法もあります」
「それは……」
言いよどむ叔父夫妻を見ながら、京介さんが言った。
「まあ、それについては今後の行く末を見て連絡さしあげます。今日はここまでにしてください。稚奈さんは私がおくります。お引き取りを……」
ふたりはそそくさと出て行った。そして、古川弁護士は京介さんに『頑張れよ』とひとこと言って、私を笑顔で見ながらいなくなった。黒子のような人も出て行った。