君の隣は誰にも譲れない
「京介さん……」
彼は、私をじっと見つめた。
「稚奈さん、僕とお付き合いしてくれる?嫌なら僕を利用し、隠れ蓑にしてくれていい」
「そんな、おうちの方がきっと許さない。お父様は高藤化学の買収やお見合いを許したんでしょ?」
「僕の側にいるのが君と会社にとってはおそらく一番安全だよ。何しろ、僕は自分を人質にしても君を守ると決めているんだ」
彼の目は本気だった。うちに対する負い目もあるんだろう。とりあえず、気の済むまで付き合って、彼が御曹司としてお相手が出来たら身を引こう。そう思った。
正直会社のこともあるので、彼に頼るしかない。従業員のためにもそうするしかないと思ったのだ。
「わかりました。じゃあ、助けて下さい。お付き合いさせてもらいます。よろしくお願いします」
立ち上がって頭を下げた。すると、私の両肩に手を置いた彼が私を自分の方へ向けた。