君の隣は誰にも譲れない

「大変だったね。もっと早く助けたかった。色々あって遅くなって済まなかった」

 そう言うと私をそっと抱き寄せた。ふんわりと彼の香水に包まれた。イランイランの香り。私も大好きだ。香りの勉強をしていたので実は結構詳しい。

「イランイランに少しラベンダーが加わっている香りですね」

「は?さすがだな。稚奈博士」

「うふふ。京介さんは何の研究を?」

「僕は……高校時代に少し先生の研究室へお邪魔していただけだよ。大学は経営を学ばされた」

「そうでしたか。父はその頃まだ大学で教えていたんですね」

「そうだね、特許を取得されてから変わってきたからね。君に何か残したかったんだろうな。君がこの道を目指しているとあの頃から嬉しそうに話されていたからね」
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