君の隣は誰にも譲れない
そうだったんだ。お父さん。思い出してしまい、つい涙があふれた。彼がハンカチをだして涙を拭ってくれた。
「……ごめん、泣かないで。これからは、僕がお父さんの代わりと言うには頼りないかもしれないけど、君を守るから何でも頼って欲しい」
こくんと頷いた私の額に彼がキスを落とした。私はびっくりして顔を上げた。
「我慢できなくて、ごめん。あまりに可愛くて……さてと、帰ろうか」
ドアを出ると、黒子のような男性が現れた。
「柴田。彼女の着替えと荷物を……」
「それでしたら、すでに準備しております」
「……あ、あの」
彼は私を見て言った。
「ああ、彼は執事。僕付きのね。柴田だ。このあいだ、渋滞で来なかった奴だよ」