君の隣は誰にも譲れない

「あの……私のことご存じなんですか?」

 私の方を見ると、うなずいた。

「君がまだ小さい頃に、会ったことがある」

「そうだったんですか。それなのに、私だってよくわかりましたね」

「まあ、な」

「あ、駅です。あの……あなたは……」

「どうもありがとう。いずれまたお礼に伺うよ」

「え?あの……」

「気をつけて帰りなさい」

 バタンと車のドアを閉めると彼は出て行った。あの笑顔を残して……。まるで王子様のような人。それが第一印象だった。
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