君の隣は誰にも譲れない

 彼を後ろからそっと抱きしめた。

「だめ。もっとちゃんとやってよ」

「ちゃんとって……」

 彼は私をぎゅっと抱きしめると首筋に頭を入れて、こめかみ近くにチュッとキスをした。

 顔を上げた彼は私を見下ろした。

「僕らは結婚前提で同棲中だよね?」

「……まあ、表向きはそうです」

「表向き?何それ?裏向きもそうだよ」

「ぷっ!」

「笑ってる場合じゃないから。君は僕のものになる予定なんだけどな。本当はもうそうしてもいいくらいだ。もう軽くキスしても嫌がらないじゃないか。でも、最初の約束通りにしているんだ。褒めてよ。『待て』が出来る犬ならぬ人間だ」
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