君の隣は誰にも譲れない

「どんな話だったんだ?」

 総帥が笑っている。京介さんごめんなさい。でもこれでいい。総帥が私に興味を持った。成功だ。それから本心を言えばいい。

「そうですね、それはまあ京介さんに聞いて下さい。それで、総帥お許し頂けますか?」

「君は面白いな。これは息子の嫁候補としては悪くない。頭がいい。しかも、自慢の息子を出し抜くほどだ。ただ、良すぎると面倒なんでね、こちらも観察する時間が欲しい」

「……父さん!」

「京介。償いをしろとそこのお嬢さんが言うからしょうがない。お前のしたいようにするがいいさ。せいぜい、彼女に逃げられないよう頑張るんだな。いつまでもつか楽しみだ」

 そして半年の猶予をもらった。帰り際、無口だった彼に引っ張られ、ぎゅうっと痛くなるほど抱きしめられた。

「このくらい、許してよ。まさか、君にここまでされるとは思わなかった」
< 58 / 91 >

この作品をシェア

pagetop