君の隣は誰にも譲れない

 翌月。

 父に部屋へ呼ばれた。入ってみると、そこにはあのときの、王子様さながらの彼がいた。

「稚奈。紹介する。彼は京介君。私の古い教え子で、長い付き合いだ」

「あ、この間の……お久しぶりです」

「ああ、この間は送ってもらってありがとう。助かったよ」

「京介君。稚奈は今年からうちに入った」

「そうですか。先生のお子さんなら相当優秀ですよね、きっと……」

 私はそのフレーズにじんましんが出るほど拒否感がある。皆に言われているのだ。

「やめてください、本当に、父には逆立ちしても、何十年経ったってかなわないと思います」

「ずいぶんと控えめなんだな。小さい頃だって試験管両手で振って遊んでいたじゃないか」

「え?」
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