君の隣は誰にも譲れない

「あ、はい。あの、何か食べるなら、おつまみになるものとか……」

「いや、いい」

「わかりました。おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

 彼は全く抱きつかなくなってきた。二週間くらい前からだ。要するに、充電なんて口ばかりなのだ。

 こうやって、すれ違い離れていくのかと最近は寂しくなってきた。

「稚奈さん、早くフった方がいいですよ。会社はもう大丈夫です。この研究もめどが付いてきましたし、その高藤の御曹司がいなくてもやっていけます。それに……」

「それに、何?」

 私は一旦顕微鏡から目を離して沢田君に聞いた。彼は周囲を見て私達二人しかいないのを確認すると近寄って来て、私の耳元で言った。
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