君の隣は誰にも譲れない

 席に座ると、前置きもなく話し出した。びっくりする。

「はあ、そうですか。初めまして……」

「初めましてじゃないわよ。あなた、何様なのよ!」

「私は、本郷稚奈というものです」

「そんなことは知ってるわよ!」

 あ、知ってるんだ。じゃあ何?

「あのね、大学時代から私の家の仕事と彼のうちの仕事は関係があって、いずれ結婚も視野に付き合っていたの」

「そうだったんですね」

「それなのに、小さな下請け企業の娘の貴女がしゃしゃり出てどういうことなの?」

「……どういうことって、別に、あの、直接京介さんに話して交渉なさってください」

「は?貴女、何考えてるの?京介さんが好きじゃないなら、身を引きなさいよ」
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