君の隣は誰にも譲れない
「はい。さようなら」
「じゃあね」
そう言って別れたのが最後だった。
その後、しばらく彼と会うことはなかった。
でも、入院中の父へ会いに来ていないとは思えなかった。親しげだったからだ。
おそらく、私が会えない時間に来ていたのか、よくわからない。
彼の美貌とたたずまいは私の周りにいる人とは明らかに違いすぎていた。
言いすぎかもしれないが、私にはまるで物語の中の王子様に見えた。
それが間違いでなかったと知るのは、しばらく経ってからのことになる。