水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
「じゃあ、どうしようかな……。私が今貰ったのを返して、元のピアスをつける?それとも、海里が持っている私のピアスを、返してもらう?」

「真央のピアスを、片方渡すよ」

「うん。じゃあ、それで。嬉しいなぁ。愛の証だね」



 真央はニコニコと耳たぶに触れて、海里につけてもらったピアスを売店で販売している鏡で確認しては、嬉しそうにしている。

 海里も嬉しそうな真央の姿を見てリラックスしているようで、二人の間にはささやかな──穏やかな時間が流れた。

「クリスマス、終わっちゃうね」

「ああ。今年の聖夜は終わってしまうかもしれないが、俺と真央の愛が終わることはない」

「うん。私もそう思うよ。海里、大好き!」

「真央、愛している……」

 二人は互いに愛を囁き合い──愛を確かめ合う。

 ──恋人たちの夜。

 イエス・キリストの生誕を祝うことのない二人は、どちらともなく売店に飾り付けられたクリスマスの装飾に手を伸ばし──黙々と、クリスマスの装飾を片付け始めた。
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