水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
仲間と共に、目指せ100億完済!
「水族館で、パフォーマンスができることになりました!」
マーメイドスイミング協会所属メンバーに全員集合を掛けると、練習場及び講習場として利用しているマーメイドスイミング協会本部に、7人のマーメイドと2人のマーマンが集結した。
「また1人欠席なの?」
「ああ……彼は資格を取得した際に、一切集まりには出ないって宣言しているから。連絡すら取っていないのよ」
「ええ?なんですか、それ。感じ悪い!」
「色々事情がある人で、仕方ないのよ」
「そこで!お集まり頂きました皆々様には協力をお願いしたく!」
「お姉ちゃん、テンションおかしくなってるよ……」
マーメイドスイミング協会には真央の妹も所属している。川原真里亜、社会人2年目の20歳。大手輸入雑貨店の事務員として働きながら、土日はマーメイドスイミング協会に顔を出している。
海里と面識はないが、真央が海里の話をしているので、連日彼へ会いに行っていることや、彼の名前だけはよく知っていた。
「実は里海水族館に、借金が100億あって……」
「ああ、赤字経営なんでしょ?紫京院グループが借金を肩代わりしたお陰でリニューアルオープンしたって、有名な話だよ」
「ええっ、そうなの!?」
「真央は海外歴長いから知らないかー。この辺じゃ、有名な話だよ」
「黒い噂の耐えない企業と提携してでも水族館を存続させたいのかって、住民からの反対運動が起こったりしたの。今でこそ落ち着いてるけど、里海ってだいぶヤバい所よ?」
「ええ……っ。どうしよう……マーメイドスイミングで借金100億、チャラにするって言っちゃった……」
真央は1年前に、ハワイから日本へ戻ってきた。
すぐに海里の所へ顔を見せなかったのは、生活が落ち着いてからでないと迷惑をかけてしまうと思ったからだ。
衣食住を確保して、自立した姿を海里に見せたいと尻込みしていた時間が仇になったのかもしれない。せめて、日本のゴシップ記事をくまなく眺めていたならば――もっと早くに、海里を助けられた。
(ショックなんて受けてる場合じゃない。海里が借金返済の為に、私との約束を破ったとしても。私が帰る場所は残しておいてくれた)
真央は、海里に借りを返さなくてはならない。それこそ、死にものぐるいで。