水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
 インストラクターとしてメインに働いているのは真央と会長、そしてマーマンの旦那。3名だけだ。

 その他のメンバーは気が向いたら、予定が空いたらヘルプで駆けつけてくるような形で、未来のマーメイドとマーマンを育成している。



「もうちょっとで資格とれそうな子たちをショーに回すしかないでしょ。派遣とかバイト扱いで。ヘルプ3、資格者2で回せる?」

「資格者1には常に私が入るよ。言い出しっぺだもん。責任持ってやりたい」

「責任持ってって……週7は無理でしょ」

「却下。せめて週5。土日に真央が固定で入るとして……」

「わたし、土日しか入れないから……。お姉ちゃんの代わりも、できるよ……」

「あ、そっか。真里亜も金髪だから。メインで入ってもらったら違和感なくできるかも」



 真央が水族館のショーへ出演しても、3名編成なら2人、5人編成なら4人都合をつけて貰わなければならない。マーメイドスイミング協会に所属しているマーメイドとマーマンはほとんどがマリンスポーツに全く関係のない職業についている為、平日時間を空けるのが難しいのだ。

 資格を持っていない未来のインストラクター候補たちはいるが、長い時間潜らせるわけにはいかない。レベルも落ちるので、土日だけ経験者を集めて金額を上げ、ワンランク上のショーとして開催するかどうかを検討する必要がありそうだ。



「逆に平日真央に入ってもらった方がいいってこと?」

「そうなるね。真里亜が土日しか入れないなら。ただ、コーチングの方が不公平になるかな……」

「来年誰かしら資格が取れたらもう少し余裕ができんだろ。一生ってわけじゃねぇんだしさ」

「そうなの?借金返したら縁切り?」

「あ、私は継続してショーに出たいけど、みんなを無理矢理付き合わせるようなことはしないよ。興味があるメンツにだけ残ってもらうとか、ショーメインの子たちを育てるとか、一年間で考えながらやるつもり」



 真央のわがままで一生涯3足のわらじを履かせてこき使うわけにはいかない。
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