水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
「心配いらないよ!私は海里と、12歳の時から、結婚の約束をしていたんだよ。男女交際は、早いもの勝ちだよね?」
「いや、いやいやいや……」
「早いもの勝ちの意味が、間違ってるでしょ……」
「どっちに約束したかが重要じゃねぇぞ?どっちが先に籍を入れたか、交際しているかが重要だからな?」
「お約束をしただけではキープしたことにならないと思います……」
「えっ。そうなの?じゃあ、海里と私は結婚できないのかな……?」
真央は寄ってたかって仲間たちから否定され、不安になってしまった。
海里に再会できた時点で、借金さえ返済すれば海里と二人で歩む輝かしい道が開けると信じていた真央は、はしごを外されたような気持ちになってしまい、しゅん、と項垂れる。
その様子を見ていた仲間たちは、全員で顔を見合わせて肩を落とした。
「あの様子なら……結婚はできると思うけどねぇ……」
「いやー、どうだろうな?脈アリなら、真央からは離れねぇだろ」
「あんたは刺されたいのか生き残りたいのか、はっきりしなさいよ……」
「真央、どーなんだ?」
「……私?」
マーマンから話題を振られた真央は、きょとんと首を傾げる。何を聞かれているか、よくわからなかったからだ。
呆れ顔の仲間たちは顔を見合わせ、誰が真央に指摘するかを視線だけで話し合っている。
「……お姉ちゃんが、館長さんと……結婚したいけど、にっちもさっちも行かなくて困っているなら……協力してくれるって……」
「ほんと!?海里と私の仲、取り持ってくれるの!?」
「いやぁ、こいつじゃ無理でしょ」
「役不足感は否めないよねー」
「俺たちの前でイチャイチャしてるってことは、それなりに効果があるってことだろ?嫉妬心煽ってゴールインだ!」
「やったー!私、海里とゴールインしたい!」
「真央、あのねぇ……。相手の気持ちを考えなさいよ」
「嫉妬心煽って、うまくいくのは……館長さんがお姉ちゃんを、大好きだったときだけですよね……」
「……海里はなにか事情があって、私を好きだと言えないだけなんだよ……!早く好きだって言ってもらえるように、頑張らなきゃ……っ!」
仲間の素朴な疑問を受け取った真央は、強い使命感に駆られた。