水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる

「事情って、借金？」

「頑張るべきは真央じゃなくて、借金を膨れ上がらせた館長じゃないの？」

「お姉ちゃんが借金を完済しても、また借金をする可能性だって……ありますよね……」

「ギャンブル依存症は治らないって言うしなぁ」

「借金って、ギャンブルじゃないでしょ？」

　仲間たちは好き勝手に海里が借金の理由を話し合っている。

　借金の理由問いかけられた真央は、オーバーリアクション気味に首を振り、借金の理由を説明した。


「水族館の運営費だったんじゃなかった……？」

「そうよ。私、週刊誌で見たもの。真央、館長から直接聞いてないの？」

「うん……。海里からは、100億の借金があるとしか聞かされてないよ」

「あー、そういやこないだ驚いてたな。思い出したわ」

「海里が私に思いを告げられないのは、借金があるからなんだよ！借金を返済したら、きっと海里も…！私を好きだって言ってくれるはずだよ！」

　真央と海里が添い遂げるには、借金　返済が絶対条件だ。

　真央が金銭を稼ぎ借金を返済すれば、海里は真央に、12年前と変わらぬ気持ちを伝えてくれると信じている。


「それは憶測の息を出ないでしょ？そうだと決まったわけじゃないし、嫉妬心作戦だってうまくいくか……」

「私、絶対海里を助けるから……！」

「あー、だめだ。聞いてねぇよ。あれは」

「ですが、真央さんがパフォーマンスをする前……。館長さんが変な感じだったのは事実ですし……」

「変な感じ？」

「死んだ魚の目をしていると言いますか……。借金返済の目処が立たず……お姉ちゃんと会って思いを伝えたくても……伝えられずに苦しんでいる線は……ありえないわけではないのかもしれません……」

「やっぱり俺が、人肌脱ぐしかねぇな！」

「あんたじゃ、嫉妬心を煽れないでしょーが。もっとスキンシップの激しいマーマンを連れてきなさいよ」

「陽キャは既婚かクズって、相場が決まってるからねぇ……」

　勝手に考察をして盛り上がる仲間たちの声など気にした様子もなく、真央はメラメラと瞳の奥に炎を滾らせ、より一層マーメイドスイミングに打ち込むのだった。