水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
海里水族館の売店スタッフを兼任します。
「今日からお世話になります!河原真央です!よろしくお願いします!」
真央は里海水族館の社員として、6月25日付で働くことになった。
真央が案内係になると、紫京院と衝突するのではないかと見越した海里は、川俣の娘が働いている売店のレジ打ちを任せる。
この売店はお土産売り場のようだが、あまり売上が上がっていないらしい。商品も年代物ばかりで、どこか寂れた印象を与えている。
巨大水槽でのパフォーマンスは当初、7月1日を予定していた。
1週間前にチケット販売を開始した所、ホームページがアクセス多量によりサーバーダウンして、つかいものにならなくなってしまったのだ。
想定の100倍アクセスがあったそうで、急遽抽選で席を決めることになってしまい、真央は開店休業状態に陥る。
海里の借金を一分一秒でも早く返済したかった真央はこの一週間を使い、水族館の従業員としてできるとから始めようと躍起になっていた。
「ちょりーっす。川俣最愛。よろー」
「ちょ、ちょり……?」
「原っち知らんの?マジ化石じゃん」
「え、ええと……?」
「ま、言葉遣いで怒鳴られるよりは新鮮な反応だからいっか。原っち、レジ打ちは?経験あんの?」
「あ、うん。前職はインストラクターなんだけど、基本一人で全部こなすから。お会計のレジ打ちはバッチリだよ。ただ……売店だとピッてやれば終わりなのかな?ずっと手打ちだったから――」
「そうそ。タグのバーコード、ピッって通してやる奴~。原っちマジ即戦力じゃん。ま、言うほど買いに来ないけどー」
最愛は今どきの若者で、真央の4つ下。20歳だ。
髪も金髪に染めているようなので、真央も地毛でよさそうな気はしたが、金髪で働くとマーメイドスイミングのメイン人魚が真央であると想像がつく。
厄介なファンが押しかけて業務に支障が出る可能性を考慮し、売店で業務を行う際は今まで通り黒髪ウィッグを被って地味な印象を与え、日本人の中へ溶け込むことにした。
最愛の言う通り、初日は平日だったこともあり、売店に立ち寄る客の姿は数えるほどしか現れない。
暇を持て余した真央は、ショーの準備、仲間への連絡、海里との打ち合わせ、シフト管理等の作業をしながら、売店の弱点を洗い出していく。
「売り場作りって、最愛ちゃんの担当?」
「んー?あたしじゃないよー。あたしだったらもっとバリイケな売り場作りするし」
「最愛ちゃんだったら、どんな売り場にする?」
「どんな……?なんでもいい?」
「言うだけならタダだよ」
「んとね、こんな感じにするけどー?」
最愛はさらさらと真っ白な紙にイメージする売り場を書いていくが、ものの数分で現在販売している商品の特徴を捉えた綺麗な指示書が描かれ、真央は目を見張る。
真央は里海水族館の社員として、6月25日付で働くことになった。
真央が案内係になると、紫京院と衝突するのではないかと見越した海里は、川俣の娘が働いている売店のレジ打ちを任せる。
この売店はお土産売り場のようだが、あまり売上が上がっていないらしい。商品も年代物ばかりで、どこか寂れた印象を与えている。
巨大水槽でのパフォーマンスは当初、7月1日を予定していた。
1週間前にチケット販売を開始した所、ホームページがアクセス多量によりサーバーダウンして、つかいものにならなくなってしまったのだ。
想定の100倍アクセスがあったそうで、急遽抽選で席を決めることになってしまい、真央は開店休業状態に陥る。
海里の借金を一分一秒でも早く返済したかった真央はこの一週間を使い、水族館の従業員としてできるとから始めようと躍起になっていた。
「ちょりーっす。川俣最愛。よろー」
「ちょ、ちょり……?」
「原っち知らんの?マジ化石じゃん」
「え、ええと……?」
「ま、言葉遣いで怒鳴られるよりは新鮮な反応だからいっか。原っち、レジ打ちは?経験あんの?」
「あ、うん。前職はインストラクターなんだけど、基本一人で全部こなすから。お会計のレジ打ちはバッチリだよ。ただ……売店だとピッてやれば終わりなのかな?ずっと手打ちだったから――」
「そうそ。タグのバーコード、ピッって通してやる奴~。原っちマジ即戦力じゃん。ま、言うほど買いに来ないけどー」
最愛は今どきの若者で、真央の4つ下。20歳だ。
髪も金髪に染めているようなので、真央も地毛でよさそうな気はしたが、金髪で働くとマーメイドスイミングのメイン人魚が真央であると想像がつく。
厄介なファンが押しかけて業務に支障が出る可能性を考慮し、売店で業務を行う際は今まで通り黒髪ウィッグを被って地味な印象を与え、日本人の中へ溶け込むことにした。
最愛の言う通り、初日は平日だったこともあり、売店に立ち寄る客の姿は数えるほどしか現れない。
暇を持て余した真央は、ショーの準備、仲間への連絡、海里との打ち合わせ、シフト管理等の作業をしながら、売店の弱点を洗い出していく。
「売り場作りって、最愛ちゃんの担当?」
「んー?あたしじゃないよー。あたしだったらもっとバリイケな売り場作りするし」
「最愛ちゃんだったら、どんな売り場にする?」
「どんな……?なんでもいい?」
「言うだけならタダだよ」
「んとね、こんな感じにするけどー?」
最愛はさらさらと真っ白な紙にイメージする売り場を書いていくが、ものの数分で現在販売している商品の特徴を捉えた綺麗な指示書が描かれ、真央は目を見張る。