水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
ギザギザの歯を見せる鮫のぬいぐるみとどこが似ているのか。
紫京院が絶句している間に、真央は紫京院と距離を取りつつ、彼女が気にしていないことを告げた。
「あ、あたしのどこがこの鮫に似ていると――」
「あ、その子は私のポケットマネーで買って、最愛ちゃんが洋服を作ってくれたの!シーズンごとにお着替えするから!ちゃんと、埃が溜まってないかとか、ブラッシングされているかとか。ちゃんと定期的に見るからね!」
「ぶ、ぶら……?ぬいぐるみを、ブラッシングするのですか……。貴方は一体何を――」
「真央だよ!」
「……はぁ」
「貴方じゃなくて、真央!川原真央だよ!」
「あたしが貴方のような邪魔者を、何故名前で呼ぶ必要が……」
「だって紫京院さんは、里海水族館で働く仲間でしょ?」
「……貴方、自分の立場を理解しているのですか」
紫京院は距離を取って叫ぶ真央に近づいていく。
無理やり握らされたぬいぐるみは、しっかりと両腕で抱き抱えているあたり、案外気に入ったのかもしれない。彼女は声を潜め、真央の耳元で囁いた。
「んー。将来、館長の奥さんになる人?」
「貴方は本気で、借金を全て完済できるとお思いですの」
「やってみなくちゃわからないけど……。私と海里が力を合わせたら、不可能なことなんてないよ!変化を恐れて立ち止まるよりも、一歩でもいいから前を向いて歩き出すのが大事だって、海里が私に教えてくれたんだ!」
真央は12年前の海里を思い浮かべ、腕に取手を引っ掛けていた籠から真新しいぬいぐるみを取り出して笑った。
紫京院は難しい顔をして、真央から押し付けられたぬいぐるみを見つめていた。
「借金を完済するまでに、紫京院さんと名前で呼び合うくらい仲良くなれたらいいなぁって思ってる。案外、仲良しさんになれるかもだよ?」
「あたしと貴方が?一体、どのような幻想を抱けばそのような発想になるのか……。あたしにはさっぱり理解できません。敵同士が仲良くなるのは、倒すべき共通の敵が現れた時のみです」
「つまり……第三の女が現れたら、私と仲良くしてくれるってこと?」
「貴方のような厄介は、一人相手をするだけで十分です」
「えへへ。こうやって言い合いができるってことは、仲良し証拠だよね?」
紫京院が絶句している間に、真央は紫京院と距離を取りつつ、彼女が気にしていないことを告げた。
「あ、あたしのどこがこの鮫に似ていると――」
「あ、その子は私のポケットマネーで買って、最愛ちゃんが洋服を作ってくれたの!シーズンごとにお着替えするから!ちゃんと、埃が溜まってないかとか、ブラッシングされているかとか。ちゃんと定期的に見るからね!」
「ぶ、ぶら……?ぬいぐるみを、ブラッシングするのですか……。貴方は一体何を――」
「真央だよ!」
「……はぁ」
「貴方じゃなくて、真央!川原真央だよ!」
「あたしが貴方のような邪魔者を、何故名前で呼ぶ必要が……」
「だって紫京院さんは、里海水族館で働く仲間でしょ?」
「……貴方、自分の立場を理解しているのですか」
紫京院は距離を取って叫ぶ真央に近づいていく。
無理やり握らされたぬいぐるみは、しっかりと両腕で抱き抱えているあたり、案外気に入ったのかもしれない。彼女は声を潜め、真央の耳元で囁いた。
「んー。将来、館長の奥さんになる人?」
「貴方は本気で、借金を全て完済できるとお思いですの」
「やってみなくちゃわからないけど……。私と海里が力を合わせたら、不可能なことなんてないよ!変化を恐れて立ち止まるよりも、一歩でもいいから前を向いて歩き出すのが大事だって、海里が私に教えてくれたんだ!」
真央は12年前の海里を思い浮かべ、腕に取手を引っ掛けていた籠から真新しいぬいぐるみを取り出して笑った。
紫京院は難しい顔をして、真央から押し付けられたぬいぐるみを見つめていた。
「借金を完済するまでに、紫京院さんと名前で呼び合うくらい仲良くなれたらいいなぁって思ってる。案外、仲良しさんになれるかもだよ?」
「あたしと貴方が?一体、どのような幻想を抱けばそのような発想になるのか……。あたしにはさっぱり理解できません。敵同士が仲良くなるのは、倒すべき共通の敵が現れた時のみです」
「つまり……第三の女が現れたら、私と仲良くしてくれるってこと?」
「貴方のような厄介は、一人相手をするだけで十分です」
「えへへ。こうやって言い合いができるってことは、仲良し証拠だよね?」