水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
12年ぶりの再会
──それから、12年後。
24歳になった真央は、思い出の水族館にやってきた。手にはA4の分厚い資料を携え、入園料を払い入場した真央は、思い出の巨大水槽を目指す。
(リニューアルしたからかな……配置が変わってる……)
12年も経っていれば、老朽化などで館内の設備も一新する必要があったのだろう。一生懸命思い出の場所を探す真央は、展示された説明文、飼育されている魚たちが何一つ思い出と一致していないことに気づく。
(12年は、長すぎたのかな……)
真央は12年前、巨大水槽があった場所を目指したが、その場所は来場者の立ち入りが禁じられていた。関係者しか入れない場所になっており、巨大水槽は見当たらない。
しばらくその場所を呆然と眺めていた真央は、足早に来た道を戻り、案内カウンターの女性に恐る恐る声をかけた。
「あの。12年前は……。あ、ええと。昔の水族館に詳しいですか?」
「昔の、ですか?いえ、申し訳ございません。当館は、数年前にリニューアルオープンしておりまして。数十年前ですと、運営会社が異なりますので……」
「えっ!?あの、でも!館長は海里、ですよね?12年前、館長をやっていた人の息子さん!」
「当館の館長は確かに川越海里ですが……。館長のお知り合いですか?」
「あ、はい。約束とかは、していないんですけど……。連絡って、取れたりしますか?」
「お約束のない方のお取次ぎは……」
「あの、私。真央って言います。河原真央。名字は名乗っていないので、12年前、この水族館で約束をした真央だって伝えてくだされば、きっと……!」
「……大変申し訳ございませんが、私の一存ではお取次ぎはしかねます」
案内カウンターの女性はとまどいがちに真央の要望には答えられないと言われたが、一度断られたくらいで引き下がるようでは、ハワイでは暮らせない。
真央は大人しい性格が災いして、幼少期日本ではいじめられることが多かったが、ハワイでは常に友達の輪の中でおしゃべりをしているような明るい性格の女性として成長した。
この女性に罪はないが、真央は海里との約束を果たすためにこの水族館へやってきたのだ。海里に会えないのなら、別の人間に取り次いで貰えるように頼むしかない。
「あの、先程数年前にリニューアルオープンされたって言ってましたよね。それより前のことを知っている人、本当に全員辞めてしまったんですか?蒲田さん、山本さん、川俣さんとかーー」
「……飼育員の、川俣ですか……?」
「まだ働いているなら、取り次いでもらえますよね!?」
「……少々お待ちくださいませ」
12年前、水族館に入り浸ってた真央が知っているのは海里だけではない。従業員には実の娘みたいに可愛がって貰っていた。
(きっと、大きくなったねって褒めてくれる。約束を守ってくれたんだって、海里にも、絶対会える……!)
真央は案内カウンターの女性にジンベイザメの展示エリアへ行くよう告げられ、駆け足でその展示エリアへと向かう。真央はすぐに、川俣の姿を捉えた。12年前よりも、随分と老け込んだ……見慣れた顔は、真央と目を合わせた瞬間に深いため息を付く。
「川俣さん!お久しぶりです!真央です!12年ぶりに、おにーさんへ会いに来ました!」
「もう、君が大好きな海里くんはいないよ」
「……え……?」
真央は驚いてしまった。
24歳になった真央は、思い出の水族館にやってきた。手にはA4の分厚い資料を携え、入園料を払い入場した真央は、思い出の巨大水槽を目指す。
(リニューアルしたからかな……配置が変わってる……)
12年も経っていれば、老朽化などで館内の設備も一新する必要があったのだろう。一生懸命思い出の場所を探す真央は、展示された説明文、飼育されている魚たちが何一つ思い出と一致していないことに気づく。
(12年は、長すぎたのかな……)
真央は12年前、巨大水槽があった場所を目指したが、その場所は来場者の立ち入りが禁じられていた。関係者しか入れない場所になっており、巨大水槽は見当たらない。
しばらくその場所を呆然と眺めていた真央は、足早に来た道を戻り、案内カウンターの女性に恐る恐る声をかけた。
「あの。12年前は……。あ、ええと。昔の水族館に詳しいですか?」
「昔の、ですか?いえ、申し訳ございません。当館は、数年前にリニューアルオープンしておりまして。数十年前ですと、運営会社が異なりますので……」
「えっ!?あの、でも!館長は海里、ですよね?12年前、館長をやっていた人の息子さん!」
「当館の館長は確かに川越海里ですが……。館長のお知り合いですか?」
「あ、はい。約束とかは、していないんですけど……。連絡って、取れたりしますか?」
「お約束のない方のお取次ぎは……」
「あの、私。真央って言います。河原真央。名字は名乗っていないので、12年前、この水族館で約束をした真央だって伝えてくだされば、きっと……!」
「……大変申し訳ございませんが、私の一存ではお取次ぎはしかねます」
案内カウンターの女性はとまどいがちに真央の要望には答えられないと言われたが、一度断られたくらいで引き下がるようでは、ハワイでは暮らせない。
真央は大人しい性格が災いして、幼少期日本ではいじめられることが多かったが、ハワイでは常に友達の輪の中でおしゃべりをしているような明るい性格の女性として成長した。
この女性に罪はないが、真央は海里との約束を果たすためにこの水族館へやってきたのだ。海里に会えないのなら、別の人間に取り次いで貰えるように頼むしかない。
「あの、先程数年前にリニューアルオープンされたって言ってましたよね。それより前のことを知っている人、本当に全員辞めてしまったんですか?蒲田さん、山本さん、川俣さんとかーー」
「……飼育員の、川俣ですか……?」
「まだ働いているなら、取り次いでもらえますよね!?」
「……少々お待ちくださいませ」
12年前、水族館に入り浸ってた真央が知っているのは海里だけではない。従業員には実の娘みたいに可愛がって貰っていた。
(きっと、大きくなったねって褒めてくれる。約束を守ってくれたんだって、海里にも、絶対会える……!)
真央は案内カウンターの女性にジンベイザメの展示エリアへ行くよう告げられ、駆け足でその展示エリアへと向かう。真央はすぐに、川俣の姿を捉えた。12年前よりも、随分と老け込んだ……見慣れた顔は、真央と目を合わせた瞬間に深いため息を付く。
「川俣さん!お久しぶりです!真央です!12年ぶりに、おにーさんへ会いに来ました!」
「もう、君が大好きな海里くんはいないよ」
「……え……?」
真央は驚いてしまった。