水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
最低館長(海里視点)
腕の中で真央が眠ったことを確認した海里は、紫京院を睨みつけた。
熱がある真央と言い争い、体調をさらに悪化させるつもりなのかと訴えかける視線は、恐ろしく厳しいものだ。
恐ろしく厳しい視線を向けられても、紫京院は大して気にすることなく眠る真央を見つめた。
「とても、大切にしているのですね」
「大切に、しないわけがない。真央は俺のマーメイドだ」
「海里さんのマーメイドではなくては、価値がないとでも言いたそうですね。可哀想に……」
紫京院は真央に同情をしているようで、切なげに眉を伏せる。
真央と紫京院は違うのに、彼女は自分の境遇と重ね合わせているのだろう。
海里が借金まみれの里海を継がなければ──紫京院は海里がよく知る人物と、本来であれば結ばれる運命だったからだ。
「お前が望むものは、真央に協力を要請しなくとも手に入るだろ」
「そうですね」
「何故、真央に協力を要請した」
「彼女が、あたしにはないものを持っているからです」
紫京院は、真央の明るさが羨ましかった。愛する人とよく似た太陽のような明るさを見ていたら、あの明るさを穢したいと欲望が渦を巻く。
「俺から自由を奪い……真央からも明るさを奪おうとするのか……」
「あたしは海里さんの、敵ではありません。あの人さえ里海水族館へ戻ってきてくだされば、紫京院は手を引くと約束致しましょう」
「……俺に、あいつを連れ戻せと言うのか」
「ええ。あの人を追い出した、海里さんが連れ戻すべきです」
「あいつは勝手に出て行った」
「自分の否を認めたくないならそれでも構いませんけれど、海里さんがやらないのでしたら、彼女に頼むだけのこと。事情のわからない彼女を、巻き込みたくないのでしょう」
「俺が働きかけなくても……真央は戻って来てくれた。あいつもいずれ……」
海里は言葉を濁すと、これ以上話すことはないとばかりに真央を抱き上げる。
その様子をじっと見つめていた紫京院は、背を向けた海里に呆れた声で問いかける。
熱がある真央と言い争い、体調をさらに悪化させるつもりなのかと訴えかける視線は、恐ろしく厳しいものだ。
恐ろしく厳しい視線を向けられても、紫京院は大して気にすることなく眠る真央を見つめた。
「とても、大切にしているのですね」
「大切に、しないわけがない。真央は俺のマーメイドだ」
「海里さんのマーメイドではなくては、価値がないとでも言いたそうですね。可哀想に……」
紫京院は真央に同情をしているようで、切なげに眉を伏せる。
真央と紫京院は違うのに、彼女は自分の境遇と重ね合わせているのだろう。
海里が借金まみれの里海を継がなければ──紫京院は海里がよく知る人物と、本来であれば結ばれる運命だったからだ。
「お前が望むものは、真央に協力を要請しなくとも手に入るだろ」
「そうですね」
「何故、真央に協力を要請した」
「彼女が、あたしにはないものを持っているからです」
紫京院は、真央の明るさが羨ましかった。愛する人とよく似た太陽のような明るさを見ていたら、あの明るさを穢したいと欲望が渦を巻く。
「俺から自由を奪い……真央からも明るさを奪おうとするのか……」
「あたしは海里さんの、敵ではありません。あの人さえ里海水族館へ戻ってきてくだされば、紫京院は手を引くと約束致しましょう」
「……俺に、あいつを連れ戻せと言うのか」
「ええ。あの人を追い出した、海里さんが連れ戻すべきです」
「あいつは勝手に出て行った」
「自分の否を認めたくないならそれでも構いませんけれど、海里さんがやらないのでしたら、彼女に頼むだけのこと。事情のわからない彼女を、巻き込みたくないのでしょう」
「俺が働きかけなくても……真央は戻って来てくれた。あいつもいずれ……」
海里は言葉を濁すと、これ以上話すことはないとばかりに真央を抱き上げる。
その様子をじっと見つめていた紫京院は、背を向けた海里に呆れた声で問いかける。