水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
 真央は明るく元気な振る舞い方を身に着けてはいるが、根底はあまり変化していない。

(人前に出るのは怖い。加害されるかもしれないから……)

 ぶるぶると震え、引きこもっている妹の真里亜とそっくりな真央が、妹と異なるところがあるならば──それは真央の手が届く所に、愛する海里がいることだろう。

「真央……愛している……」

 海里は多くを望まない。真央が側にいれば、他には何も必要ないと考えているからだ。

「私も、海里のことが大好きだよ」


 真央は海里の愛を素直に受け取り、愛を返しながら思案する。

(……紫京院さんの好きな人が、私の想定している人だったらいいな)


 借金完済の為には、かつて里海で働いていた仲間達の協力が必要不可欠だ。

 12年前に里海水族館で働いていた飼育員達は、海の生き物たちを飼育するプロフェッショナル達だった。

 海里にその気がなくとも。
 真央は必ず、散らばって行方知れずの仲間達を、呼び戻して見せる。



「頑張るからね。海里。一人で悩んだり、苦しんだりしたら駄目だよ」

「……ああ……」

 真央は海里の腕に抱かれながら、二人で夢の国へ旅立った。


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