水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
 真央は見覚えのない部屋で意識を覚醒させた。

 目を開いた真央は自分がどこで何をしていたのか思い出せず、ぼんやりと壁を眺めている。



「真央」



 海里に抱きつかれて、やっと自分が河原真央であること、寝ている場合ではないことに気づいた。

 休んでいる場合ではない。やらなければならない仕事は山積みだ。



「海里?今何時?仕事しなきゃ……」

「今日は休め」

「でも」

「きっちり週休二日休んでくれ。心臓に悪い。死んだように眠るから……」

「休んでる暇なんてないよ。一日でも早く、借金返済しなきゃ。紫京院さんに海里を取られちゃう」

「無理するな。過労死でもしたら、元も子もないだろ」

「でも……」

「一年で返済する必要はない」

「駄目なの。みんなを巻き込んでいるから。一年だけって約束は守らなくちゃ……」

「わかった。もう休め」

「海里、私起きたばっかりなのに……」



 海里に目元を覆い隠された真央は、寝るしかない。仕方なくその日、真央は仕事を休んだ。
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