水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
(ずっとこうやってじゃれあっていたら、もっと仲良くなれるかもしれないのに……)

 真央は少しだけ残念に思いながら、紫京院を見つめる。目を合わせた彼女はため息をつき、真央へ静かに命令した。


「ぬいぐるみの着替えを終えたなら、早く仕事に戻りなさい」

「それじゃあ、またね」



 手を振って別れる真央に、彼女が手を振り返すことはない。

(振られちゃった)

 真央トボトボと、館内のいたる所に置かれたぬいぐるみをサンタ服へ着せ替えるために歩き出す。


(ちょっとやりすぎかな……)



 嫌味なほど、やりすぎな方が牽制にはいいと聞く。真央は紫京院と仲良くなるには仕方がないことだと考え直し、気持ちを切り替え──ルンタッタ、ルンタッタとスキップしながら、仕事に戻った。

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