水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
「はじめまして。いつも妹がお世話になっております。河原真央と申します」

「ご丁寧に。俺はここの社長で――ん?河原だって?」

「里海水族館の従業員です。社長は、うちのショーにご興味があるのだとか」

「ああ。巨大水槽の中で美しい人魚姫が舞い踊る姿は、まさに芸術だ……!俺は深く感動している!そう!人魚姫を俺のものにしたいと思うほどに……!」

「どうですか、うちの妹……あなたの人魚姫と、引き合わせる代わりに。里海水族館に投資してみるのは」

「詳しい話を聞かせてもらおうか」

「な……!おい!やってることあの女と変わんねぇじゃねぇかよ!」

「私は妹と結婚させるなんて言っていない。里海の将来性に出資するかどうかと紫京院さんから経営権を奪えるだけの金銭を支払えるかとか、問題は山ほどあるから。本決まりってわけでもない」



 真央は詳しい話を館長である海里からさせる代わりに、取引をした。

 碧を今週の日曜、引きずって水槽の前まで引きずってきてくれと頼む。社長は憧れの人魚姫に会うことを条件に、これを了承したのだった。

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