水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
「碧さんたちは海里と仲直りしたから、これでもう安心だね!これから里海水族館の従業員として、ペンギンさんやイルカさんたちの育成トレーナーとしてショーを開催するでしょ?」

「これが仲直りって言うのかはわかんねーけどな」

「それで、ええと。社長さんは……真里亜の態度次第で、私達に協力してくれる。ホワイトナイトさんってことでいいんですよね」

「ホワイトナイト……」

「そうだな!我が愛しの人魚姫が俺のものになるならば、100億でも200億でも肩替りしようではないか!」

「海里は今、紫京院グループに肩替りしてもらった借金をゼロにするために、頑張っているでしょ?その借金を、こちらの社長さんに買い取って貰える話が出てきているの。今里海が抱える借金よりも多くのお金を一時的に紫京院グループにお支払いしてもらって、運営権を海里に戻す」


 社長のありがたい申し出を受けた真央は、これからみんなにしてほしいことを真央は指示した。

 海里と打ち合わせをすることなく、勝手に真央が発言しているため、海里の意向は一切入っていない。

 海里は真央の口から紡がれる言葉に、驚きを隠せないようだ。

 目を見開きながら、じっと耳を傾けていた。


「借金の借り換えって、イメージが近いかな?その話が実現すれば、海里は紫京院さんに行動を制限される必要はなくなるの。借金はちょっと増えちゃうかもしれないけど……。全額まとめて返済してもらう予定だから。利子とかはゼロになるんだよ。こんなに都合のいい、話はないよね!」

「そんなうまい話が……」

「うまい話はうちの妹を差し出すことで、実現できるのです」

「お、お姉ちゃんの鬼……!」

 真里亜は真央に了承していないと非難の声を上げたが、大人しく引っ込み思案で自分に自信がない真里亜が社長と交際するには、多少強引にでも真央が間を取り持つ必要があった。

(真里亜は社長のこと、嫌ってはいなそうだから……。背中を押しても、問題ないよね)


 真里亜が社長を避けるのは、好き避けと呼ばれるものだ。

 社長は真里亜を人魚姫と崇め、真里亜が出演する土日の公演に足を運ぶリピーターらしい。

 社長が真里亜を好きなのは、間違えようのない事実だ。

(真里亜は愛される資格がないと、尻込みしているみたいだけど……)

 姉として妹の幸せを思うのは、当然だろう。
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