水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
「いいか、俺たちが手を貸すからには、絶対紫京院と縁を切れよ。真央と結婚しなきゃ、許さねぇからな!」

「結婚式では、碧が新郎の友人としてスピーチをするんだろうな……」

「ボロクソ言ってやる。12年前の恨み、きっちり返してやんよ!」

「心強い味方だね、海里!」


 真央は後ろから抱きしめている海里を見上げて笑顔を見せる。

 笑いかけてくれるとばかり考えていたいた真央は、海里の疲れているよいにしか見えない乾いた笑いを見て、首を傾げる。

(海里、嬉しくないのかなぁ……)

 真央は余計なことをしてしまっただろうかと、しょんぼり下を向いたが、すぐに仲間達から驚きの声が上がった。

「おい、海里!今、笑っただろ!?」

「うん、間違いない」

「笑顔は笑顔でも、あんまり嬉しくなさそうな笑みだったよ……?」

「知らねぇのかよ。こいつ、まともに笑うのは12年ぶりだぜ」

「真央ちゃんがいなくなってから、海里くんは感情を押し殺していたからね……」

「……海里、ほんと?」

 海里の寂しそうな笑顔が、苦笑いに変化した。笑わなさすぎて、表情筋が引きつっているのだろう。

 小さく頷いた海里に、真央はぴょんぴょん飛び跳ねた。
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