【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜

　少し、痩せたなと思う。心労をかけてしまった。

　どうしてすぐに気がつかなかったのか。こんなにも彼女は近くにいたのに。

　ずっと会いたかった人を見つけられて、抱きかかえながら感動でしばらく見つめていると、彼女の瞼の筋肉が小刻みに動き、そして長いまつ毛が上がった。

　まるで毒リンゴを食べて動かなくなっていた白雪姫が目覚めたかのように美しかった。

　彼女は数度目をしばたたかせて、意識を完全に戻そうとしていた。

「社長？」

　彼女はとても不思議そうに言った。まるで、まだ夢の中にいて寝ぼけたまま言葉を零したように見える。

「大丈夫か？」

　俺が微笑みながら話しかけると、彼女は意識を完全に戻したように、目を見開いて驚いた。

「動いちゃ駄目だ」

　立ち上がろうとしていた彼女をしっかりと抱きかかえる。

「いや、でも、もう大丈夫なので！」

「駄目だ。俺が運ぶ」

　彼女を横抱きにして立ち上がった。

「重いので降ろしてください！」

「軽いよ。それに慣れているから」