【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜

　彼女はきょとんとした丸い目で不思議そうに俺を見つめた。彼女を横抱きにして移動するのは初めてのことじゃない。俺は口元に笑みを浮かべ目を細める。

「家はどこ？」

「え⁉ 家まで運ぶ気ですか⁉」

「もちろんだ。ゆっくり休養しなければいけない」

「いや、でも……」

　渋る彼女に提案を告げる。

「じゃあ、俺の家に来るか？」

　すると彼女は首を勢いよく横に振って、南の方向を指さした。

「家はあの緑色のアパートです」

「思っていたより近いね。この距離ならタクシーを使う必要もなさそうだ」

　俺は彼女を横抱きにしながら、早足で歩き出した。

　彼女はもう諦めたらしく、大人しく俺につかまっている。幸せだ。

　アパートに着いたので、彼女を降ろした。こういってはなんだが、古く汚いわけではないがセキュリティが甘そうなアパートだ。彼女がここに住んでいるのは心配だ。自然と俺の眉根が寄る。

「ありがとうございました。それではこれで」

　彼女は俺に一礼すると、ドアに鍵を差し込んだ。