【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
「一階か?」

「え、はい」

 彼女は振り返って答える。

「一人暮らし?」

「はい」

 どう見ても一人暮らし用のアパートなのに、そんなことを聞く俺を彼女は不思議そうな顔をして返事をした。

「ここは心配だな。もう少しセキュリティのしっかりした場所に引っ越さないと」

 すると彼女は明るく無邪気に笑って、

「大丈夫ですよ。一人暮らしなんてこんなものですよ?」

 と言った。

 今すぐ彼女に新しい住まいを与えてあげたい。でも現実的にすぐには無理だ。

「では、失礼します」

 彼女は家に入ってしまった。側で看病してやりたいが叶わない。

 まあ、仕方がない。これで彼女の素性もわかったし、家も知ることができた。

 未成年じゃなくて心底安心する。でも、まさかうちの社員だったなんて。

 さあ、これからどうしようか。彼女の正体に、俺が見抜いていることを彼女は知らない。

 言ってもいいが、なんだか逃げられそうで怖い。

 しばらくは、社長と社員という間柄で、ゆっくり彼女に近づこう。

(とはいえ、この家は心配だ)

 俺はアパートを見上げてため息をついた。

 もしも彼女にストーカーができたら大変だ。彼女はあんなに可愛いのだ、つけ狙う男が出てきたっておかしくはない。さあ、どうするか。
 

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