【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
「体調が悪かった田中を気にかけてくれたのかな」

「社長は菩薩のような方ですから」

「というか、ちょっと変わっている」

 変わっている? どういう意味だろうと思って聞こうとすると、主任が部長に呼ばれたので会話はそこで終わった。

 若干心残りだったけれど、昨日できなかった分、しっかり仕事をしなければ!

 クリーンウェアに着替えてクリーンルームへ入る。

 室内の温度、湿度、室間差圧など空気清浄度を計測し、記入していく。日々のルーティンが終わったあと、自分の研究へと移る。
 機器を使って計測実験を行っていると、気がついたら真後ろに社長が座っていた。

「え⁉ いつの間に!」

 私が驚いて声を上げると、社長はなんでもないことのように目で笑いながら言った。

「気にせず続けて。俺はいないものだと思ってくれていいから」

(いや、それは無理でしょ)

 やたらと近い距離で覗き込まれているので、緊張で心臓が早鐘を打つ。

 社長に見られながら、必死に集中して仕事を続ける。正直、とてもやりづらい。
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