【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
私の不審な表情とは裏腹に、社長はとても嬉しそうだ。

 変に懐かれてしまっている。困るかといえば、そりゃ困る。なんせ社長だ。

 でも、一緒にいられて嬉しいという気持ちもある。

 ただ、私の好きと、社長が私に対して寄せる好意は決定的に違うと思う。とても複雑な心境だ。

 ご機嫌の社長と並んで歩く。いつから待っていたのだろう。もしかしたら朝も私のことを待っていたのかな?

 昨日わざわざ買ってきてくれた差し入れを思い出す。

 ただの社員にそんなことまでするだろうか。でも、社長から好かれるようなことをした覚えはない。

「そうだ、昨日お渡しした防犯ブザーは持ってきている?」

「あ……家に、ちゃんと置いています」

 まずい、あれは持ち歩きしないといけないやつだったのか。家や携帯用で、だから大きさも違うし複数個あったのか。

 社長は眉根を寄せて厳しく言った。

「いけないよ、こういう夜道の女性の一人歩きが一番危ない。家もセキュリティが甘いし、田中さんに何かあったら……」
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