【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
「社長!」

 走りながら社長の腕を掴むと、社長は驚いて止まった。

「あの、すみません、私、言い過ぎました」

 息を荒げて申し訳なさそうな目で社長を見上げる私に、社長は優しく微笑んだ。

「謝ることはないよ。俺は大丈夫だから」

 儚げに微笑む社長の顔は慈愛に満ちていた。大丈夫なんかじゃない、絶対傷つけた。

「でも……」

「夜も遅いし、早く帰った方がいい。本当はまた家まで送りたいが……気をつけて帰れよ」

 社長は私の頭を優しく撫でた。

 自分から突き放したくせに、離れてしまうと途端に寂しくなる。もっと一緒にいたいし、もっと社長に近づきたい。

 これが恋人同士だったら、社長に抱きついてしばらくそのままじっとしていられるのに。スーツの裾を掴んだ指をそっと離す。
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