【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
 交際ゼロ日で結婚した夫婦は緊張するだろうな。昔の人って大変だったのだなと思いながら寝室に入る。

(ああ、どうしよう。心臓が口から出そう)

 貴富さんがベッドに腰かけ、隣に座るように促されたので、少し距離を開けながら隣に腰かける。

 不自然に少しだけ開いた隙間を、貴富さんが腰を浮かして詰めてくる。どうしたらいいのかわからなくて、俯いたまま体を強張らせた。

 貴富さんの手が私の頬に触れ、顔の横に垂れ流していた髪を耳にかけた。

 目をぎゅっと瞑り、覚悟を決める。

「無理しなくてもいいよ」

 貴富さんは寂しそうな声色で言った。

 弾かれるように貴富さんの顔を見上げる。貴富さんは、私が嫌々ながら承諾したと思っているのだろうか。

 親友のために自分を犠牲にして、貴富さんと結婚することを選んだと。

「無理とか嫌だとか、そういうわけじゃないのです」
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