ご令嬢ではありません!~身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです~
 どう伝えればいいのだろう。色々複雑な感情が絡まりすぎていて、自分でも自分の本当の気持ちが見えない。

 緊張もある。大きな決断に臆病になっている気持ちもある。でも、それと同時に嬉しさもあるのだ。

 もう二度とこの場所には来られないと思っていた。貴富さんと一緒になる未来なんてあり得るはずがないと思っていた。

 奇跡のような出来事に信じられず戸惑い続けてもいる。

「私は……私はずっと……」

 言葉にするのが怖い。伝えてしまったら、もう自分の気持ちを隠せなくなる。嘘を吐き続けることができなくなる。傷つかないように自分の気持ちを隠して、それでなんとか自分を保ってきた。でも伝えてしまったらそれもできなくなる。

「ずっと……?」

 貴富さんは小首を傾げて、真っ直ぐに私の顔を見つめた。

(貴富さんは本当に私のことが好きなのだろうか。ずっと変わらず好きでい続けてくれるのだろうか)
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